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天の王朝

天の王朝

海外でのダイビングあれjこれ

私が海外で体験したダイビングの話をまとめたものです。下の写真左はタヒチのモーレア島のダイビングで撮ったものです(サメとクマノミ)。右はボラボラ。

さめボラボラ

楽園ダイビング(タヒチ、モルジブ、ハワイ、パラオ)
レモンシャーク
私のダイビング暦は122本。そのうち沖縄・与那国で6本潜った以外はすべて海外での体験だ。オーストラリアのケアンズから始まって、バリ島、サイパン、テニアンと潜り、カリブ海へ移ってケイマン、タークス&カイコウズ、コロンブス島、メキシコのカンクン、コズメルへと足を運んだ。

そして1999年4月にフレンチポリネシアのタヒチ・モーレア島へ。潜って驚いたのは、サメがうようよいること。一回のダイビングで20~30匹程度のサメに出会う。そのほとんどがリーフシャークのブラックチップやホワイトチップで、グレーシャークなども見受けられた。これらのサメはせいぜい大きくても2メートルだが、タヒチの海では時々、その倍の4メートルはあるレモンシャークに出会うこともある。最初に遭遇したときは、かなりの衝撃を受けた。

当時私はクラブメッドのダイビング(安いパッケージがあり、12本でなんと約1万3000円=普通なら2本分の料金に相当)を頻繁に利用していたが、バディダイブといってインストラクターなしの二人一組で勝手に潜るのが基本であった。その日は中国系アメリカ人のジムと一緒に潜った。潜行すると、かなり流れがきつい。ドリフトダイブではないので、最初は流れに逆らって進むのが基本だが、どんなに先に泳ごうとしても、戻されてしまう。初心者のダイバーたちは流されてしまうので、船のロープに捕まって、海中で鈴生りとなっている。

私たちは仕方なく、海底の岩をつかみながら、流れが一瞬弱まるのを待ちながらほふく前進。ようやく数十メートル前に進んだときに、今来た船の方を振り向くと、そこには巨大な一匹のサメが流れなどものともせず、海底付近を悠々と泳いでいた。周りのリーフシャークが子供に見えてしまうような堂々とした風貌。まさにタヒチの海の王のようであった。やがてもう二匹のレモンシャークが加わって、私たちの周りをぐるぐると泳ぎはじめた。絶体絶命か! 

だが大丈夫。レモンシャークはそれほど凶暴なサメではない。最初はまっすぐに人間に向かって来ても、向こうの方から進路を変える。当時、妊娠したレモンシャークがいたが、「レオーネちゃん」と呼ばれていた。もちろん野生の動物だから、人間に慣れているわけではない。私たちの様子を見ながら、エサではないことがわかると、再び強烈な流れなど気にせずに、巨体をくねらせながら泳ぎ去っていった。

マンタ

タヒチ(正式名:フランス領ポリネシア)には、環礁でできた118ほどの島々がある。ダイバーがよく訪れるのは、ソシエテ諸島のボラボラ、モーレア、ツアモツ諸島のランギロア、マニヒ、ティケハウなどだ。

前回紹介したモーレアはサメだらけ。合計12本潜ったが、レモンシャークをはじめとするサメ以外に印象に残っているのは、ドクウツボやウミガメ、クマノミぐらい。マンタも時々現われるようだが、タヒチでマンタ狙いなら、これまではボラボラだった。

だがボラボラでは、近年のホテル乱立で騒音が増えたせいか、あるいは潮の流れが変わってしまったせいか、ここ半年以上、必ずと言っていいほど現われたポイント(アナウ・リーフ)に、マンタが近寄らなくなってしまった(マンタポイントのそばにホテルが立て続けにできたせいではないかと言われている)。一年前までは、このポイントに潜れば10枚ぐらい見ることも可能だったが、今ではほとんど出なくなったので、現在はどのショップも行かなくなった。

ボラボラは以前も、ホテル建設で流出した土砂でトオプアのそばのダイビングポイントを一つ失っている。ボラボラはいわば、タヒチ島のように一大観光地になろうとしているようだ。タヒチ観光局はこれでいいと思っているようだが、よき自然は失われ、私たちのようなリピーターも失うことになる。

マニヒやランギロアでもマンタは見ることはできる。12月のマニヒでは一回潜ると1,2枚現われた。マニヒのダイビングの醍醐味は、「パス」といって環礁の中と外洋を結ぶ海の通路のようなところで流れに乗って泳いだり、海底を横切ったりして楽しむことだ。流れは時間によって外洋に向かって流れたり、環礁の中に向かって流れたりする。

そのパスを、海底をはって横切るダイビングをやっているとき、全長1・5メートルぐらいの子供のマンタが私たちに向かってやってきた。とにかく流れがきついので、私たちは岩にへばりついて流されないようにするのがやっと。マンタは私のすぐそばにいたダイバーの頭上までやってきた。そのダイバーが手を伸ばせば届くような距離だ。

明らかにそのマンタは、私たちに興味をもち私たちを観察していた。強い流れに四苦八苦している私たちを横目に、しばらくそのダイバーの上でホバリングをしていた(アナログの銀塩では写真を撮っているので、いつかデジタルに変換して公開します。私が使っていたのはニコノスV)。きっと、こんな流れぐらいで泳げなくなる私たちが哀れに思えたにちがいない。マンタは私たちを置き去りにして、私たちにとっては泳ぐのが不可能な強烈な流れに逆らって、悠々と泳ぎ去ったのだった。


イルカ
船の上からイルカを見たことは何度もあるが、ダイビング中にイルカに遭遇するケースはなかなかない。1999年11月、ハワイ諸島・ラナイ島付近でダイビングしているときに、イルカの鳴き声を水中で聞いたのが最初のチャンスだった。しかし、皆で周りを探したが、声はすれども姿は見えなかった。

それから1年半後の2001年4月。モルジブ・バア環礁にある「ムサフシ・ドロップオフ」でダイビング中、初めて海中でイルカを目撃した。小さな島の壁に沿って50分ほど潜り、水深5メートルの海中で安全停止(減圧症の予防のため、浮上前に水深5メートル位のところで3~5分停止し、体内に溶け込んだ窒素を排出してからエキジットすること)をしているときだった。

何気に沖の方を見ると、ちょうど私たちと同じ水深のところに巨大な物体が浮かんでいるのが視界に入ってきた。イルカだ。見た瞬間、結構大きく見えたので、最初は小型のクジラかと思ったほどだった。全部で5頭、私たちを横目で見て、くねくねと泳ぎながら沖の彼方へ消えた。ちょっと距離があったので顔の形はよくわからなかったが、私にはコビレゴンドウに見えた。だがガイドは、ハシナガイルカではないかと言っていた。ハシナガにしてはちょっと大きいなという感じがした。

次にイルカを海中で見たのは、2002年12月のタヒチ・ツアモツ諸島のランギロアだ。ランギロアのダイビングは豪快で、パスを流れる強烈な潮の流れに乗ってジェットコースターのようにドリフトする。海中で流れに乗る際は、ガイドから離れたところにいると別の流れに乗ってあらぬ方角へ流されてしまうから、ガイドから半径5メートル以内の場所に集まらなくてはならない。ガイドの合図で、皆がいっせいにパスの流れに身を投じるわけだ。

流れに身を任せたら、もうどうすることもできない。じたばたしても流れには逆らえないので、ひたすら流される。しかも、かなりのスピードだ。イルカはその移動中に現われた。私が遠くを見ていると、後方からいきなり私の頭上1メートルぐらいのところを跳び越して前方にハンドウイルカが出現した。ハンドウイルカは、水族館や映画などでもっとも頻繁に親しまれてきたイルカである。さらに2頭のハンドウイルカが私の足元から前方に現われ、計3頭になった。

このような激しい流れであっても、3頭はまったく意に介さないようであった。流されて遠ざかる私たちを尻目に、3頭はパスを自由自在に泳いでいた。

その二日後、今度はパスのそばにある珊瑚の棚の上でダイビングをしていると、再び3頭のハンドウイルカが現われた。私たちのすぐそばまで来て、これ見よがしに水中を駆け巡る。スピンしながら垂直に上昇したり、猛スピードで回転してみせたりする。彼らのショータイムだ。明らかに私たちを意識して遊んでいるようだった。3頭は一通りの芸を私たちに見せると、そのまま猛スピードで泳ぎ去った。少しせわしないイルカたちであった。

クジラ(1)
海でクジラを最初に見たのは、米国ボストンで暮らしていた1997年5月、ホエール・ウォッチングのツアーに参加したときだった。ボストン港から高速艇で約一時間半、コッド岬の沖にザトウクジラセミクジラが集まる世界でも有数のポイント(ステルワーゲンバンク)があるのだ。周囲の深海から湧き上がる栄養分に富んだ深海水がプランクトンを発生させ、そのプランクトンを追って群泳性の小魚が集まる。ザトウクジラやセミクジラにとっては格好の採餌場となっている。

ボストンの5月はまだまだ寒い。海上だとなおさらだ。冷たい風が吹きすさぶ中、甲板に上がって海を見つめた。そのとき、甲板に出ていた観光客の一団から歓声が上がった。その人たちが見ている方向を見ると、巨大なザトウクジラの尻尾(尾ビレ)が海中に没するところであった。すると、別の観光客の一団からも歓声が上がる。そちらの方向では、ザトウクジラがコブ状の背びれを海面に現していた。

それからはもう、あちらこちらでクジラが海面から姿を現しては、やがて尾ビレを見せながら海中に潜っていくシーンが繰り広げられた。全部で20頭ぐらいいただろうか。重複してカウントしている可能性があるので、個体が何頭いたかはわからない。

もっとも、この海域のクジラを研究している海洋生物学者であれば、個体数を正確に言い当てることができただろう。固体を識別する場合、彼らは尾ビレに着目する。尾ビレ裏側の黒と白の模様は、人間の指紋のように、一頭一頭それぞれ異なる。ロッキングチェアーの模様があるため「ロッカー」と名づけられたクジラなど、名前を持った人気者もいる。

私はその後、1999年から2001年にかけて、ハワイ諸島マウイ島で何度もザトウクジラを見た。12月ごろから3月ごろまでの間、繁殖と子育てのため、この太平洋の真ん中にあるハワイ諸島に大挙してやってくるのだ。その数は、北太平洋に生息するザトウクジラの3分の2に当たる4000頭ほどであるとみられている。

ハワイ諸島では、とくにザトウクジラが集中するマウイ島、モロカイ島、ラナイ島に囲まれた海域は、ザトウクジラのための海洋サンクチュアリに指定されている。この海域ではいかなる方法でも、こちら側からクジラの100ヤード(約90メートル)以内への接近が禁じられている(ただし、向こうからこちらにやってくる場合は、このかぎりではない)。

マウイ島でこの時期、ダイビングをすると、ボートでポイントに行くまでにクジラに遭遇しないで目的地に到達するのが難しいほどだ。ボートはクジラを避けながら航行しなければない。

当時、私が滞在していたマウイ島のコンドミニアムは二階建てで、二階にベッドルームがあり、モロカイ島や海が一望できた。そのベッドルームのベッドからも、ザトウクジラが潮を吹いて浮かび上がり、泳ぎ去るのを見たことがある。双眼鏡なしでも見える、海岸から100メートルも離れていない距離であった。マウイ島ではそれほど、クジラが身近に出現するのだ。

クジラ2(カヤックダイビング)
さすがに、ダイビング中に海中で巨大なクジラに出会ったことはない。ただ、マウイ島のそばにある有名なダイビングポイントである三日月型のモロキニ島でのダイビングが終わった直後、船上で休んでいるときに五〇メートルほど離れたところを悠然と泳ぐザトウクジラを見たことはある。もう5分ほど長くダイビングしていたら、海中で目撃できたかもしれないのに、残念であった。

マウイ島カパルア湾では、一風変わったダイビングも経験した。カヤックダイビングだ。波のない静かな日にしか、実施されない。

1999年12月31日。その日はガイドを含めて3人であった。一人乗りカヤックにダイビングに必要な機材をセットして、ガイドについて海に漕ぎ出す。カヤックはその日が初めてであったので、ついて行くのに結構苦労した(漕ぎ方は一応、教えてくれる)。

小さな湾を抜け、そのまま海岸線に沿って北上。
穏やかな大海原をカヤックで進む。やがて別の小さな入り江につくと、そこにカヤックを係留して、座ったままタンクを背負い込む。フィンやマスクを装着し、レギュレーターを加えて準備完了。カヤックの座席の部分でお尻を支点にクルッと90度回転し、そのままカヤックから海中に、バックロール(ダイビングで背中から入水する方法)で滑り込むように飛び込む。

その日は、波は静かだったか、海中は少しにごっていた。すぐにハナヒゲウツボに遭遇。海亀も四匹出会った。やや遠くだったがマダラトビエイも通り過ぎていった。そのときだ、クジラの声が水中に響いた。ザトウクジラだ。声のする方向を見たが、透明度がよくないので遠くは見えない。三人でしばらく、沖の方を見つめたが、声の主の姿を見ることはできなかった。

既にダイビングを始めて45分ほど経過していた。私たちはダイビングを切り上げ、カヤックが係留してある場所に引き返した。カヤックへの戻り方は、それほど難しくない。まず水中で、タンクのついたBCD(ベスト状の機材)を取り外し、カヤックに載せてくくりつける。次にカヤックに手を掛け、フィンで思いっきりキックしながら浮上し、腹ばいの格好でカヤックの座席の部分に乗り上げる。ここでお尻が座席のところにくるように体を転がして仰向けになり、再びお尻を支点にしてクルッと90度回転して、元の状態に戻る。後はマスクとフィンをはずして、カヤックにくくりつければ、それでおしまい。

そして、カヤックでカパルア湾に向かって大海原を漕いでいるときだった。60~70メートルほど離れた海面にザトウクジラが現われた。なんという近さ。さきほど聞いた声の主であろうか。今度は、海を伝わってクジラの息吹が聞こえてきそうだった。大きな船の上や陸上から見ているのとは明らかに異なる親近感。大自然の中で同じ海に浮かぶ生命としての一体感。私が最もクジラに近づいたと思える瞬間であった。

海の中で降る「雨」
マウイ島での滞在が長かったので、普段なら行けないようなポイントでもダイビングをした。マウイ島から少し離れたモロカイ島東端の岬の先に浮かぶタートル・ロックという場所だ。当時滞在していたマウイ島カパルアのコンドミニアムからも見える特徴あるペアの岩で、タートル(亀)という名前の通り、丸みのある亀の甲羅のような岩と、その先に亀の頭のように見える岩が水面に突き出ている。マウイ島からボートで一時間近くかかるが、比較的波が穏やかで、かつ潮流の条件が整えば何週間かに一度、潜りに行くこともある。

2000年1月3日、ちょうどタートル・ロックに行く条件がうまくそろったようだ。やや波があったが、ザトウクジラがところどころで顔を出す海を、「広がる水平線」号に乗って、一路モロカイ島へと向かった。

タートル・ロックは近くで見ると、かなり大きな岩であった。荒波に長年削られながらも、威風堂々とした態で眼前にそびえ立っていた。最初のポイントに潜ってみると、海中は魚の天国のようなところだ。チョウチョウウオやハタタテなど小さな魚や、バラクーダなどが泳ぎ、ロブスターが3匹岩陰に隠れていた。遠くの方でクジラの鳴く声が聞こえる。

その後ボートの上で50分休み、タートル・ロックの別の場所へ移動して潜った。この二本目のダイビングが圧巻であった。最初は、ヨスジフエダイの群れや、岩場にたたずんでいるオトヒメエビなどを観察していたのだが、ある岩場を越えたときにガイドが上を指差した。そこには、岸壁に沿って無数のミレットシードバタフライフィッシュが乱舞していたのだ。ミレットシードとはミレット(アワやキビ)の種のこと。その種のような黒い斑点が縦に並んでいるので、このように名づけられた。ハワイ固有のチョウチョウウオだ。

このポイントは、その名も「フィッシュ・レイン」と呼ばれている。チョウチョウウオやハタタテが、まるで雨のように“降る”からだ。いつの間にか、私たちはチョウチョウウオたちの群れの中にいた。どこを見ても、魚ばかり。無数の星の中を宇宙遊泳でもしているような気持ちになる。ミレットシードに混じって、チョウチョウウオ科のチョウハンも泳いでいる。英語名ではラクーン・バタフライフィッシュ。目の周りがラクーン(アライグマ)のように黒くてかわいい。

ここは魚種が豊富で、キンチャクダイやスズメダイの仲間も多く観察できた。大物こそ見ることはできなかったが、小さい魚の宝庫のような、印象深いダイビングスポットだった。

▼「パニック1」あるいは「真っ青な世界」
マウイ島では、三日月形のモロキニ島の外側にあたるバックウォール(裏の壁)のドリフトダイブ(潮の流れに乗って潜るダイビング)が面白い。三日月形の内側は湾になっており、水深も浅くなだらかだが、外側(裏側)は急激なドロップオフで豪快な地形になっている。島の真裏の辺りはほぼ垂直の崖になっており、その崖は水深200メートル以上の海底へと真っ逆さまに落ち込んでいる。それだけ深いと海底はまったく見えない。つまり、崖の壁以外は青の世界に完全に包まれるわけだ。

しかし、「底なしの海」に潜るということが、ダイバーの心理に大きな影響を与えることがある。ベテランのダイバーならばなんのことはないが、体験の浅いダイバーだと、底が見えないという不安からパニックに陥ることがあるのだ。

2000年1月5日のダイビングはその意味で、悲惨であった。いつものようにバックウォールに飛び込むと、そこには真っ青な世界が待ち受けていた。私はそのときまでに何度もバックウォールを潜っていたので、楽しくてしょうがなかったが、私たちのグループにはほぼ初心者のダイバーもいた。

ダイビングを開始して10分ぐらい経っただろうか。壁の近くで戯れているチョウチョウウオやウチワカイメンなどの写真を撮っていると、ガイドが急にダイビングをストップするとの合図を出した。私たちはあっけに取られた。まだ潜行したばかりなのに、なぜ浮上しなければならないのか。するとガイドは一人の屈強なアメリカ人を指差して、彼のエアがなくなったのだ、とジェスチャーで説明した。このダイビングの場合、一人のエアがなくなれば全員がその人に合わせて、浮上することになっていたのだ。

しかし、10分とはいくらなんでも短すぎる。普通水深20メートルほどのダイビングでは45分ぐらいは潜る。実際、そのアメリカ人以外のダイバーのエアはほとんど減っていなかった。ボートに上がってから理由を聞いたところ、エアがなくなったダイバーは、あまりにも海が深いのでパニック状態となり、極度に呼吸が荒くなって、あっという間にエアを消費してしまったのだという。安全停止の時間をいれても15分という、最短のダイビングであった。
(続く)

▼サメ1
タヒチ・ツアモツ諸島のマニヒ。水上バンガローですね。

マニヒ

2001年12月29日。この日はダイビングではなく、シュノーケリング・ツアーに参加しました。毎日ダイビングするよりは、一日ぐらい途中で休みを入れたほうが、体にいいですからね。

スズメダイ

こんなところをシュノーケリングして遊んでいました。水深は3メートルぐらいでしょうか。光が十分に海底に届いて、きれいです。

ルリスズメダイ

岩の周りで泳いでいるのは、ルリスズメダイ。のどかですね。

スズメダイ

しばらくすると、何か大きな魚がこちらに向かって来るのに気づきました。

なんだろうと思ってよく見ると、サメですね。まっすぐ私に向かって泳いできます。ピンチ! 

サメ

面白い写真でしょう。普通、サメの写真というと、横や斜めから撮った写真が多いですが、これは真正面です。まったく無駄のない形をしていますね。まるでミサイルのよう。速く泳げるはずです。ちょっとアップにしてみましょう。

サメ

下にはコバンザメ、顔の周りには、獲物のおこぼれにあずかろうと、スズメダイが併泳しています。ところで獲物って、私のこと?

さあ、大変! どうしましょう。ダイビング中であれば、前後左右上下自由自在に動けますが、シュノーケリングだと、前後左右ぐらいにしか動けませんね。水面に浮かんでいますから、サメも狙いを定めやすいわけです。

さて、ここで問題です。私の次の行動を予測して、次から選んでください。

1、一目散に反対方向である岸に向かって逃げた。
2、チキンレースよろしく、サメに向かって泳いだ(当然、先によけた方が負けですね)。
3、近寄ってきたサメを持っていたカメラで殴り、撃退した。
4、サメに食べられた。
5、一緒に記念撮影した。

答えは明日。

▼サメ2
昨日の答えですが、一番近い答えが2ですね。本当は5が一番いいのですが、そうはいきません。

最初、サメが近づいてきたときはびっくりしました。だがよく見ると、背びれなどヒレの先が黒くなっています。ブラックチップ・シャーク(日本ではツマグロ)と呼ばれる、主にリーフに棲むリーフシャークですね。このサメはそんなに凶暴ではありません。もちろん野生の動物ですから、興奮させると何をしでかすかわかりません。だけれども、タヒチではよく見かけるサメで、まず襲ってくることはないでしょう。

そうとわかれば、安心ですね。ブラックチップは体長1・2~1・5メートルほど。私のほうが大きいです。一般的に海の世界では、大きいということは強いということです。私がわざとサメのほうに向かって泳ぐと、すぐにサメは方向を変え、逃げていってしまいました。

写真は、私に恐れをなして”尻尾を巻いて”退散するブラックチップ。水面を雨が叩いていますね。先ほどまで輝いていた太陽が隠れてしまって、写真も暗くなってしまいました。

blacktip

ただ、気をつけなくてはいけないのは、サメの種類によっては、いつもこうはいかないということです。以前紹介したレモンシャークも最初はこちらに向かってきますが、ある距離までくると方向を変えます。ところが、タイガーシャーク1や、ホオジロザメ1はそうはいきません(ホオジロザメは最近、川崎市の港で発見されました。こんな近くまで来ているんですね)。

タイガーシャークやホオジロザメは人間よりはるかに大きいです。4~8メートルにも成長します。8メートル級のタイガーやホオジロをもし海の中で見たら、どんなにベテランのダイバーでも平常心ではいられないでしょうね。実際に見た人は「潜水艦のようだった」と感想を述べています。

彼らは、自分より小さな人間を見ても怖がりません。エサなのかどうか、近づいてきて様子を見るでしょうね。ダイバーが怪我をして血でも流していたら、襲ってくる可能性が非常に高くなります。

でも、もっと危険に身をさらしているのは、普通のダイバーよりも、サーファーや水中銃を使った漁をしている人たちでしょう。魚の血のにおいや断末魔の痙攣はサメを呼び寄せます。また、ボードの上で両手をバタつかせているサーファーは、下から見るとタイガーの好物の亀や、ホオジロの好物であるアシカのように見えます。ハワイや宮古島でサーファーがサメに襲われたことがありますが、タイガーシャークが好物と間違えて食い付いたのではないかとみられています。

満月の晩に海で泳ぐのも危険ですよ。私が1999年4月に米ワシントンDCからタヒチに向かっていたとき、機中でロサンゼルスタイムズを読みました。そこには、新婚旅行先のハワイで悲劇に遭遇した悲惨なカップルのケースが紹介されていました。

ハワイ諸島のどこの島かは忘れましたが、そのカップルは二人乗りのカヌーに乗って、海に漕ぎ出しました。ところが沖に出ると強い潮の流れの中に入ってしまって岸に戻れなくなってしまったんですね。岸は遠ざかり、二人は漂流してしまいます。やがて日が暮れて、夜になります。

幸いなことに、海は荒れていなくて、静かです。空には満月が煌々と輝いています。月の光が黄金色に海を染めています。ロマンチックですね。ただ、ハワイは常夏と言っても、夜は結構冷たい風が吹くんです。寒くなった二人は、海水に手をつけて水温を確かめました。すると結構温かいことに気づきました。

新郎がためしに海に飛び込んでみると、海の中はやはりとっても温かい。カヌーの上で寒さに震えている新婦にも海の中に入るように告げました。二人はカヌーに手をかけて海の中につかりました。空には満月。海の中は温かく、気持ちがいいです。

しかし、恐怖は次の瞬間にやってきました。新婦が叫び声を上げたんですね。驚いて振り向いた新郎が見たのは、大きな魚が新婦のそばにいて攻撃を加えている光景でした。攻撃された新婦はカヌーから手を離したため、夜の海をカヌーからどんどん離れていきます。新郎は新婦の名を呼びました。返事がありません。新婦は暗闇の中に消えていきました。この暗闇と不気味なほど静かな海の上で、新郎はまったくの無力でした。

怖くなって再びカヌーに乗り込んだ新郎は一晩中、ただガタガタ震えていたようです。翌日、カヌーはある島に流れ着き、新郎は救出されました。警察はサメの襲撃にあったという新郎の話を一応、信じつつも、保険金殺人などの可能性についても調べていると、書いてありました。

どう思いますか? 保険金殺人か、サメの襲撃か。私はおそらくタイガーシャークの襲撃があったのではないかと思います。その根拠は、満月だったからです。満月の晩、海の上に浮かんでいるということは、下から見ると襲ってくださいといっているようなものなんですね。もちろんサメの目から見ての話ですが、満月によって獲物のシルエットがはっきりと浮かび上がるんです。

ガラパゴス諸島のアシカは、満月の晩になると、海に魚を捕りに行く数がめっきり減るそうです。彼らはわかっているんですね。空が月で明るいと、深海の暗がりからサメが忍び寄ってくることを。アシカのほうからは見づらくて、サメのほうからは見やすい状況ができあがるわけです。自然界においては、アシカにとって致命的な悪条件ということになりますね。

今日はちょっと怖い話になりました。次回もサメの話ですが、もうちょっと明るい話になると思います。

▼サメ3
前回は実際にサメの被害に遭った例を紹介するなど結構怖い話になってしまいましたが、ダイバーがそのように怖い目に遭うことは、まずありません。威嚇して興奮させたりしないかぎり、サメは襲ってきませんね。

この写真は、2002年4月23日に撮ったものです。サメのお腹がきれいに写っていますね。

グレーリーフシャーク

タヒチ・ボラボラ島のムリムリというポイントです。ボラボラ空港の裏手にある環礁の外側にあるポイントで、外洋なので結構波が荒いです。写真のサメはグレーリーフシャークといってメジロザメの一種ですね。前回紹介したブラックチップより少しだけ凶暴で2割ほど体が大きいサメです。私の頭上1メートルぐらいそばをかすめていきましたが、別に何かしでかすわけではありません。

このポイントでは、ほかにもバラクーダの群れやウミガメが見られました。
しかし、なんと言ってもサメが多いですね。すべてグレーリーフシャークで15~20匹ほどがうようよしていました。

これが証拠の写真です。何匹いるように見えますか? 7匹?

サメの群れ

実は、よく見ると写真左下の暗がりにも一匹隠れていますので、全部で8匹でした。

でも、ダイバーが浮き上がってくるのを待っているわけではありません。ここは餌付けしているんですね。だから、ボートが来ると常連のサメさんが寄ってきてしまう。私はサメの餌付けは好きではありませんが(時々タイガーシャークも出てきてしまうからです)、その年の春はマンタポイントが濁っていて潜れないので、連れて行かれてしまいました。利用したショップはトップダイブといってボラボラでは一番いいショップだといわれています。そう思って、ランギロアでもトップダイブを使ったら、遭難してしまいました。その話はまた別の機会に書きますね。

▼コバンザメ
今日はサメはサメでもコバンザメを紹介します。

まずこの写真を見てください。

コバンザメ

ダイバーをただ撮ったわけではありません。タンクに何か付いてますね。

上から撮った写真です。

コバンザメ

そうです。コバンザメですね。ダイバーのタンクに、いつの間にかくっついていたのです。もちろん本人は気づいていません。傍から見ていると、とてもおかしくて、つい水中で笑ってしまいました。

コバンザメは、頭部背面の吸盤でサメやマンタなど大きな魚にくっついて移動します。その吸盤の形が小判型なので、小判ザメと呼ばれるようになりました。大型の魚のおこぼれに預かったり、大型の魚の影に隠れて捕食したりするために、このような行動を取るんですね。

サメと名づけられていますが、サメの仲間ではなく、スズキ目コバンザメ科の魚で、サバやマグロの仲間に分類されています。私は浅瀬で、コバンザメの群れを見たこともあります。

ところで、私はそのダイバーのタンクに吸い付いているコバンザメを見て笑っていたのですが、後で聞いたら、私のタンクにもくっついていたそうです。

灯台下暗しでしたね。

(ボラボラ島のマンタポイントでの一コマ)

▼マンタの影絵(6枚)

マンタマンタ

マンタ

マンタ

マンタ

マンタ

(ボラボラのマンタポイントで)

▼水深40メートルの世界

海底

ダイビングは通常、水深20メートルぐらいまでしか潜りませんが、時々水深30メートル以上まで潜ります。ただし、アドバンストのカードが必要で、普通のCカードでは潜らせてもらえません。

この日は私のダイブコンピュータで水深38・1メートルまで潜りました。このようなところです。

海底

ここまで深くなると、本当に真っ青な世界です。ライトを当てないと、何があるのかもわかりません。

フラッシュをたくと、シダ類が浮かび上がります。

海底

本当は海底のシダ類を見に来たわけではなく、ヘルフリッジ(シコンハタタテダイ)を探しにここまで潜ってきたのですが、残念ながらこの日は見ることができませんでした(その後、パラオで見ましたが)。

海底

浅場に浮上するときに、ハンマーヘッドが上の方をくねくねと泳いでいました。2000年3月15日。沖縄県与那国のダンヌドロップというポイントでした。

▼メガネモチノウオ(ナポレオンフィッシュ)

今日はナポレオンフィッシュです。

ナポレオンフィッシュ

「我輩の辞書に不可能はない」と、人間の言葉でしゃべったから、ナポレオンフィッシュと呼ばれるようになりました。なんてはずはないですね。オデコが出っ張っていて、ナポレオンがかぶっていた帽子に似ていることから、ナポレオンフィッシュと呼ばれるようになったそうです。でもナポレオンの肖像画を見るかぎり、ナポレオンの帽子のようには見えませんね。

ナポレオンフィッシュ

和名ではメガネモチノウオ。目の横にめがねのような筋が付いているからです。確かにめがねのフレームのように見えなくないですね。

ナポレオンフィッシュ

非常に人なつっこく、好奇心の強い魚でダイバーのすぐ近くまで寄ってきます。本当に大きな唇です。こんなに大きな唇でキスをされたら、気を失ってしまいそうですね。

サメも泳いでいたので、一緒に撮って差し上げました。

ナポレオンとサメ

ナポレオンフィッシュと出会った後、以前紹介したレモンシャークも出てきました。下の写真です。

レモンシャーク

2002年4月23日、外海に面した、ボラボラ島のタプというポイントでした。

▼ナポレオンとロウニンアジ

今日はお魚さんのツーショット。

ナポレオンと浪人アジ

昨日紹介したナポレオンフィッシュとロウニンアジです。寄り添うように泳いでいますね。かといって、この二匹、ラブラブでもなければ、仲が良いわけでもありません。ロウニンアジがナポレオンの巨体の陰に隠れているのです。

なぜ隠れているのでしょう?
エサとなる小魚がロウニンアジの姿を見ると逃げてしまうからですね。
ロウニンアジはそれほど、小魚から恐れられているということです。海のギャングと呼ぶ人もいますね。名前の由来は、浪人のように顔の辺りに切り傷のような筋があるからです。その筋の魚ということですね。いかにも、それらしい名前です。

これに対してナポレオンは、比較的おとなしい魚です。小魚はそれを知っているので、ナポレオンが現われても逃げたりしません。そこで、ロウニンアジは、このナポレオンを利用して、小魚を捕食しようとするわけです。ロウニンアジにとって、ナポレオンは隠れ蓑なのですね。

同じように小魚から恐れられている魚に、カスミアジがいます。

カスミアジもまた、他の魚に陰に隠れて捕食をします。アカエイと一緒に泳いだり、変わったケースではウツボと併泳しているのを見たことがあります。海の中では、騙したり騙されたりしながら、厳しい生存競争が展開されているわけです。

ナポレオンとロウニンアジのツーショットは、2000年4月28日、パラオのビッグ・ドロップオフで撮影しました。

▼タテジマキンチャクダイ

タテジマキンチャクダイ

私はマクロ(ハゼやウミウシなどの小さい生物の写真)をほとんど撮らないのですが、このぐらいのお魚さんは撮ります。タテジマキンチャクダイ。サザナミヤッコと並び人気のある、綺麗な魚です。

なぜ横じまなのにタテジマなの? と疑問に思われる方もいるかもしれませんが、お魚さんから見れば、縦じまなんですね。

面白いのは、幼魚は青黒白の渦巻き文様であることです。

幼魚と成魚の文様が違うのは、サザナミヤッコも同様です。不思議ですね。

タテジマキンチャクダイの写真は、パラオのコーラルガーデンというポイントで撮りました。

▼マンタの好奇心

マンタの子供は好奇心が強いようです。以前話したように、フレンチポリネシア・マニヒ島のパスで、流れが強いため海底をほふく前進しているときに、子供のマンタがダイバーの頭上に現われました。これがそのときの写真です。

マンタ

何もここまで近づくことないのに、と思うぐらい近づいてきましたね。写真を見ると、尻尾がダイバーのタンクに触れています。まるで私たちが流れに流されまいと、必死に岩に捕まっているのを面白がっているようでした。

マンタはしばらく、このダイバーの上でホバリングして、やがて流れに逆らってパスの彼方に消えて行きました。それがこの写真です。

マンタ

これまでの経験から言うと、マンタはメスと子供は人間に興味を示して、近づいてくることが多いようです。一緒に泳いでも気にしないし、こちらを横目でチラリと見たりするところが非常にかわいい。一方、オスは人間を見ると、だいたい逃げてしまいます。下の写真のマンタはメスですね。目がかわいいでしょ。

マンタ

マンタはまた、非常に頭がいいのではないかとも思えます。ボラボラ島で聞いた話では、ひれにロープが絡まったマンタが人間に助けを求めて、船の周りを泳いでいたことがあったそうです。乗組員が潜って、そのロープをカッターで切るまでその場を離れることがなかったということです。するとこのマンタは、人間ならばそのロープをはずしてくれることを知っていたことになりますね。賢い生き物です。

最後にマンタの写真を何枚か紹介しましょう。いずれもボラボラ島のマンタポイントで撮影したものです。

マンタ

マンタ

manta

manta

▼ブルーホール

海の中にポッカリ穴があいたようなブルーホール。その穴のある場所だけ、深い群青色になっています。中米ベリーズのブルーホールが世界で一番有名ですね。でも、パラオやグアムにも小さなブルーホールがあります。

下の写真はパラオのブルーホールを潜ったときに、海底からホール(穴)を見上げて撮ったものです。暗闇の中で、穴のあいているところだけ明るくなっています。

blue hole

ダイバーが私のいる海底に向かって潜行してきます。手前に写っているのは海ウチワですね。写真上方には、おそらく私が排気した空気の泡がフラッシュに浮かび上がっています。

別の場所から撮ったブルーホール。

blue hole

周りが真っ暗で何があるかよくわかりませんね。

このブルーホールをくぐって、あの有名なブルーコーナーへと抜けることもできます。ブル-コーナーの写真はまた今度。

▼上下がなくなる世界

水中では無重力状態になりますから、時々どちらが上でどちらが下か、わからなくなります。本当ですよ。水平感覚と垂直感覚が混乱してしまうんですね。次の写真を見てください。

縦と横

どちらが上でしょう? 答えは左ですね。だから本当は次の写真が”正しい”位置となります。

ウメイロモドキ

この場合は太陽が出ているので、明るい方が上でしたね。注意深く見ると、ダイバーの吐く空気の泡が向かっている方が上になるわけです。洞窟などのダイビングでは太陽が見えませんから、頼りになるのは泡になるわけです。

ところで、この魚たちは下に向かって泳いでいたんですね。ウメイロモドキというフエダイ科の魚です。いつも群れで回遊しています。

パラオのビッグドロップオフというポイントで撮影しました。


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